【九州北部豪雨災害2017】活動ストーリー 4
土砂崩れと人工林
この度の九州北部豪雨災害は、集中豪雨によって、山間部のいたるところで表層崩壊が発生し、大量の流木が河川をせき止めたことで被害を拡大させました。その量、福岡県だけで20万トン(50mプール144杯分相当)。スギの大木は、途中の川沿いの住宅を破壊しながら、川下まで流れ着き、橋に流木が溜まって水をせき止め川が氾濫しました。その濁流に巻き込まれた住宅は流され、川下では大量の土砂が住宅に流れ込みました。
私が最初に被災地に入った頃は、まだ生木の香りが集落内に漂っていました。根が付いたままの流木を見ると、地盤と共に崩れ落ちたことが分かります。今回被災した福岡県朝倉市、東峰村、大分県日田市は、林業が盛んなスギの産地です。そのスギの人工林について各紙がネガティブな報道をしています。「木材の価格低下と林業従事者不足によって手入れが行き届かず放置されている。」「挿し木で育ったから根が浅い。」「まっすぐ育てるから根が広がらない。」「一斉に植栽しているから根の深さが揃っており、根の下の地層が弱い。」等々、人工林は研究者も含め、メディアに批判されています。
そこで、「今回発生した土砂災害は、本当に人工林の問題なのか?」その疑問を地元の林業関係者(役場の林務課や森林組合)に聞いてみました。今回、土砂崩れが発生した箇所は人工林だけでなく、天然林も同様に地盤ごと崩れたそうです。また7月に林野庁が発表した調査報告によれば、間伐などの森林施業が行われている林と行われていない林との差も特に見られなかったようです。被災した朝倉市、東峰村、日田市の土質はそれぞれ異なります。朝倉市杷木地区の土壌は真砂土(まさつち)と呼ばれる花崗岩が風化してできた「砂」であり、東峰村や日田は安山岩という火成岩の一種ということからも、元々この辺り一帯の土質が脆弱であるということが分かります。
地質調査総合センターサイト参照
面会した関係者は、皆口を揃えて今回の豪雨の異常さを訴えていました。東峰村役場が設置した雨量計では7月5日午後1時~9:30までの総降雨量は793ミリを計測し、朝倉市では1時間当たり129.5ミリと観測史上最大の降雨量を記録しました。最近よく耳にする「数十年に一度の」異常気象がここでも原因となっています。スギ・ヒノキの人工林で埋め尽くされた日本の山々を考えると九州以外のどこの山間部でも起こり得る災害だと思います。
私たちは創世記のノアの方舟のような気候変動による大災害時代を迎えてしたまったのでしょうか?異常気象は避けられない自然現象なのか、それとも生態系のバランスが崩れた結果であり、その責任が経済優先の発展を求めた人類に問われているのか?
ただ、1点、希望が持てるような試みについて、日田市森林組合で話を聞きました。この地域では5年前に発生した豪雨災害以降、県委託事業として、河川沿いの両岸から10mの範囲、川と道路の間のスギを切って広葉樹(モミジ)を植林しており、その効果は出ているという話ですが、費用対効果面からも今後の経過観察が必要です。